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お知らせ -vol.12-

2015年10月1日ギャラリーの作品を「ヨット」から「初期作品を中心に」に飾り換えをしました。
松本の学生時代から初期の作品を中心とした展示です。ゆっくりご鑑賞頂ければ幸いです。

次回の入れ替えは12月を予定しております。

松本孝之絵画館だよりvol.12 (2015年10月発行)

松本絵画館2015年10〜11月の展示です


猛暑の夏だったのが嘘のようにいきなり秋が来たみたいな
残暑の短い夏でした。
皆さんいかがお過ごしでしょう?
松本絵画館にも秋の季節がやってまいりました。
今回は未発表の作品とともに新たに発見された作品も含む
初期作品を中心とした展示です。
どうぞご覧下さい。
「青春自画像 SM」
おおっと、今回は玄関をあけると松本氏自らのお出迎えです。
いらっしゃいませ。「青春自画像」

まずは、赤い色彩が中心の作品がお出迎えしてくれます。

「テーブル F6号」

「赤い花 P10号」

「葡萄のある静物 F8号」
「いちじくのある静物 M10号」
メインのギャラリーホールです。
今回は今までと違って近代日本洋画展と言えるような作品群です。

「果物 F30号」

正面に初展示作品3点、いずれも初期作品で中央の作品は新たに発見された未発表作品です。
日本洋画の創設者の黒田清輝が中心となって設立された白馬会の後を引き継いだ光風会時代の作品です。
印象派絶頂期のフランスからその技術を持ち帰った黒田清輝により日本画壇は
印象派前からの技術を持ってスタートします。
この3枚の作品もフランス印象派の描き方に忠実な技術を身に付けた当時の画壇の流れが見て取れます。


「静物」 F3 
「壺」 F4

一見、写真的ではなく形を無視したかのようにも見えますが、
ムーブメント(質感、量感)はしっかりしており
基本的な描写力(デッサン力)がなければ描けません。
白馬会から光風会へ引き継がれる時の中心的画家の一人であった田村一男の画風は
日本の掛け軸のような縦長の構図が多く、また、山の稜線なども画面の極端に上の方であったりと
特徴的な画家でした。
その田村一男に師事した松本氏の作品もその影響は大きく
こちらの4作品はその典型でしょう。
左から2枚目の縦作品はまさに田村作品的構図構成です。
「秋景 F6号」
「錦秋 F6号」
「塩山 F4号」

「山湖 F6号」

色彩の少ない作品の理由の一つとして
この時代は日本は戦争のために画材、特に油絵の具の輸入がなく
日本で油絵の具の製造もできませんでしたので非常に画材に難義した時代であったことが上げられます。
(国産の油絵の具はサクラ油絵の具56色が昭和28年に完成。専門家用絵の具は昭和46年「ヌーベル」)
そんな制限された中でもこれだけ発色を見せられる作品に仕上げているのは見事です。
こちらの作品にはマチエール(画質、絵肌)におがくずを使用しているのですが、
それは純粋にマチエールのためだけではなく、画材がない時代に少ない量の絵の具でも
インパスティングやモデリング(絵の具の盛り上げ)を行うための代用品だったのかもしれません。

「自画像」F4

展示作品を探している時、この壁に展示している「自画像」F4だと思って開けてみると
中から出て来たのは「あら、びっくり!」玄関口でお迎えしているもう一つの自画像でした。
「青春自画像」は新発見の自画像なのです。
「梨 SM」
「菊 SM」
「栗」

黒田清輝の「鉄砲百合」という作品をご存知ですか?
※「梨」「栗」は新発見された作品です。
黒田清輝「鉄砲百合」

黒田清輝「鉄砲百合」下の部分の拡大

写真のような写実に見えて近くに寄ると写真のように精密に書き込んでいる訳ではなく
あえて書き込まないで筆のタッチを活かしたベラスケス以降の洋画の描き方です。
「菊」と「栗」はこの描き方であり、この描き方を習得するには
しっかりとしたデッサン力の基礎を身に付けないと描けません。
「菊」と「栗」はとても小さな作品ですが、
たったこの2枚で松本氏のデッサン力が見て取れるのです。
入り口から右側の3作品。
「丘の秋 F10号」
「紅葉 SM」

「天狗岳遠望」F4


束ねられた練習用のキャンバスの中から見付かった「紅葉」
まさに「小さい秋、小さい秋、小さい秋、み〜つけた!」
こちらの2点も新発見の作品です。
最近思うようになったのですが、松本作品は小さな作品に優れたものが多いように思います。
今後またどのような作品が新たに見付かるのか楽しみな
専属アートコーディネーターさんです。(^O^)

ー 筆:手柴良治 ー